
タイトルの語感が示すとおり、「時をかける」願望を中年男性に重ねた一篇。少年少女ではなく、すでに人生の折り返しを過ぎた者が時を遡る——その可笑しみと切実さを抱えた物語のようだ。表紙は、スーツ姿のオジさんが青空と白雲を背景に身を翻し、宙へ駆け出す水彩画。目を見開き、両腕を広げて雲を蹴るその姿は滑稽でありながら、どこか必死だ。にじむ筆致と淡い水色の余白が時間そのものの曖昧さを思わせ、縦組みの白抜きタイトルが画面右に静かに据えられる。

著日野イズム
装丁西村弘美
装画げみ
TOブックス / 2015年
文学・評論