クロムハーツという引力

クロムハーツにある唯一無二の魅力とは

クロムハーツは1988年にアメリカのリチャードスタークによって創業したシルバーアクセサリーブランドだ。元々はバイク用の皮革製品のブランドだったが、今やもうシルバーアクセサリーとジュエリーのほうがはるかに有名だろう。日本では1991年にコムデギャルソンで取り扱いが始まり、続いて1992年にユナイテッドアローズが販売を開始した。クロムハーツの歴史や創業秘話は他のメディアが多数取り上げているため、割愛させていただくが、日本の市場がクロムハーツの躍進に大きく携わったことは間違いない。

私はクロムハーツにハマり、散財した経緯がある。正直に言うとこんなにハマるつもりは無く、少しのステータスとアクセントのつもりで、初クロムハーツを高校生の時に購入した。

スクロールバンドリングというクロムハーツの中では低価格のもの。当時はこれくらいの価格じゃないと手が出なかった。

私が高校生の頃は裏原ブーム真っ盛りだ。エアマックスが社会現象となり、レッドウィングを学校のロッカーに入れれば盗まれる時代。

今とは違いファッション雑誌が強い権威を持った時代だ。一点物のヴィンテージジーンズが見開きで数ページ掲載され、今思うと何と非効率なメディアだと思ってしまうが、当時はそれで良かったのだ。

ヴィンテージジーンズと共にレッドウィングやエアマックス、そしてクロムハーツもまたファッション誌を飾ることが多かった事により、穴が空くほどファッション誌を見ていた私の目に止まった。

強烈に覚えているのがクラシックチェーンと呼ばれるブレスレットだ。よくある喜平チェーンなのだが、重厚さが半端ではない。その重厚さにすっかりハマってしまった訳だが、そもそも地方で売っていないし、価格も当時ですら10万円を超えていた記憶がある。高校生にとっては高すぎる金額だ。

憧れと現実を調整しながらなんとか地方でもクロムハーツを扱う店を見つけ、手の出るスクロールバンドリングを購入した。それから満足したのか価格に諦めがついたのか、一旦は落ち着いたものの、社会に出て一端に収入を得れるようになった頃、欲望が再燃し、クロムハーツのアイコンとも言えるフローラルクロスリングを購入した。それからが散財のオンパレードだ。

  • ファンシーチェーンIDブレスレット
  • ファンシーウォレットチェーンロング2クリップ
  • K&Tリング
  • ミニCHプラスリング
  • トゥルーファッキンパンクリング×2
  • ローラーペンダント
  • ペーパーチェーン
  • リップス&タンチャーム
  • SBTリング
  • SBTバングル
  • ウォレット
  • アイウェア

これくらいだったかと思うが、2年くらいの期間で一気に購入した。20代での購入額としては高額すぎる買物だ。

フローラルクロスリングを購入した時に、こんなにインパクトのあるものはこれ以上は着けれない、と思ったのだが、なぜだか不足感を感じてくるのだ。

リングの重ね付けやモチーフのコーディネート。そんな事を考えているとどんどんと増えてしまい、いつしかロックスターばりのジャラジャラになってしまう。

それほどの中毒性がクロムハーツにはある。最終的には結婚指輪をオーダーまですることになった。シルバーやゴールドではなく、プラチナでオーダーしたウェディングバンドリングという代物だ。元々は私はブランドに偏向することを嫌うたちなのだが、クロムハーツには完全にやられてしまった。

洋服を選ばない強すぎる個性を持つクロムハーツ

クロムハーツに合う洋服とはどんなものだろう。かなりインパクトの強いゴシック系デザインであり、まともに「合う」と考えるとそれこそロックスターのようなスタイリングだったり、ドラキュラのような恰好になってしまうのではないか。

クロムハーツ自体の個性が強すぎることによってまともに「合う」という事を考えると非常に選択肢は少ないように思える。ただ、個性が強すぎることによって、どのようなテイストにおいても「ハズシ」になるという事でもあるのだ。

女性にも人気の高いクロムハーツは繊細な女性特有のスタイリングにおいても何故だか絶妙な融合を見せる。俗にいう甘辛コーディネートになるのだろうか。繊細なシフォンやプリーツなど甘い素材感にも難なくフィットしてしまう。それは個性が強すぎるが故、ハズシとして成立してしまうのだ。

私はファッションの好みは非常に雑食で、トラッドベースの考えではあるが、スーツなどドレススタイルも好きだし、コテコテのアメカジ、アイビーも好きだ。ユーロワークやデザイナーズブランドも着る。とにかく雑食だ。その多様なスタイリングに対して、クロムハーツは難なく合ってしまう。厳密に言うと合っていないのだが、ハズシとして幅広いスタイリングにハマってしまう。

代表的な部分で言うとドレススタイルにおいてのクロムハーツコーディネートだろう。クラシックなダブルブレストのスーツにも、清潔感のあるジャケットスタイルにもなんとなくハマる。ビジネスにおいてあのヘヴィなウォレットチェーンを着用するのは非常識以外何物でもないのだが、ルックスとしては成立する。セレクトショップの販売員などがコーディネートしているところは見たことがある人も多いのではないか。

個性が強すぎるからこそ、何も合うものが無いからこそ、どんなコーディネートとも「ハズシ」として成立してしまうクロムハーツは唯一無二の特性であり、購入を迷っている人々にはぜひ気負わずにチャレンジをしてみてほしいと思う。

やがてクロムハーツはヴィンテージ化するのか

クロムハーツの歴史は創業から30年以上経過した。ファッションのトレンド周期は30年前後と言われていて、ヴィンテージとして再注目されるのも30年以降経過したものだろう。創業当時から継続されているモチーフは非常に多く、デザインは長らく変わっていない定番アイテムも多数存在する。昨今は女性向けに華奢なデザインも増加したが、昔ながらの変わらぬ重厚なデザインは今でも購入できるわけだが、当然廃盤になったものもある。そして販売が続いているものに関しても、ハンドメイドのものなので当然変化はある。金型は数年に1回は交換しないといけないものらしく、微妙に変化が加わる。例えば創業メンバーの一人、レナードカムホートがいた時代のクロムハーツは今後ヴィンテージ化する、といった現象はあるのだろうか。

正直、今のところそのような話題は聞いたことが無いが、可能性としては充分にあるのではないかと思う。

二次流通市場でも高い価値を誇るクロムハーツがヴィンテージ化し、プレミアムが付くとなるとまた、ブランド価値が大きく上がり、評価は一変するだろう。正直そこまでの差を見分ける情報とマニアが少ないため、難しい部分はあるかと思うが、確実に違いはあるのだ。

クロムハーツの公式情報は著しく少ない。公式のホームページなど見ても全く詳細な情報は得れないし、公式の価格ですら店舗に行っても表記されておらず、店員に訪ねないと分からないという恐ろしい情報の少なさだ。

ROLEXのように、識別する番号やディティールの細かな違いなどがあれば確実に判別できるためヴィンテージ化することは間違いないのだが、何せ情報が少なく、細かい彫金の差だけで判別することはおそらく非常に難しいだろう。

私が確認する限りだが、ウォレットチェーンなどに付属するクリップ部分はモノによってかなり作りが違って見えるものがある。作られた年代などを検証するまでには至らないが、確かに作りとして比較をすると違いがある。

まだまだヴィンテージ化するには遠い道のりなのかもしれないが、その日が来ることを信じて、愉しみ、身につけるのもまた一興なのかもしれない。

クロムハーツに合うデニム

クロムハーツの魅力は先にあげた通りだが、何でも合わないけど何でも合う。だが一番合わせいものとなるとやはりデニムではないだろうか。デニムはクロムハーツ自身で販売するほど相性の良いアイテムだが、個人的にはヴィンテージ感のあるリーバイスのUSEDが最も合う。ただ、誰にでも手に入るものとしてお勧めしたいのはレプリカブランドだ。レプリカブランドは数多くあれど、日本のレプリカの完成度は非常に素晴らしく、ぜひ経年変化をクロムハーツとともに楽しんでみてほしい。

RESOULTE 710

リゾルトは有名レプリカブランドのドゥニーム創業者の林氏が作るブランド。リーバイスマニアであり多くのデニムを知り尽くした職人が作るデニムは色落ちもディティールも秀逸。710が代表的モデルだ。股上深めの細身のテーパードシルエットで、66のシルエットに近い。とにかく色落ちが秀逸でキレイなブルーに色落ちする。あたりの出具合もまた良く、ねじれなども再現する。リゾルトの推奨するサイジングは非常にタイトで為は短め。洗濯も頻繁にすることを推奨しており、荒っぽい立て落ちではなく、きれいめな雰囲気で履ける大人のレプリカジーンズだ。クロムハーツとの相性の良さはこのきれいめなヴィンテージ感にある。ただのアメカジ感コテコテのレプリカではなく、ただきれいなだけでもない独自性のあるデニムは自信を持ってお勧めしたい。

ANATOMICA 618

フランスのピエールフルニエ氏が率いるアナトミカの代表モデル618は日本製で35SUMMERSの寺本氏との初めての共同作となったデニム。本来、ライセンスで作られるものは本家とは似ても似つかない劣化したものとなるケースが多いのだが、アナトミカは違った。寺本氏の手腕あってこそなのだと思うが、このデニムはもともと寺本氏が企画し、ピエールフルニエに提案したものらしい。US NAVYの作業パンツのディティールにあるサイドシームをなくした「シームレス」は非常に美しいシルエットを生み出し、他のデニムにはない独自性を持つ。生地もまた左綾の独自の生地を使用しておりアナトミカらしい唯一無二のデニムとなっている。こちらもまたアメリカのデニム、というよりどこかフレンチな匂いのするきれいめな雰囲気がまたクロムハーツと独特な調和を生み出す。けして個性的に見える訳でもないが一味違う。そんなデニムをお探しの人々にお勧めしたい。