
江戸の町で人々に出来事を伝えた「かわらばん」。本書はその刷り屋に生まれた娘の目を通して、災害や奇談に揺れる市井のざわめきを描く児童文学である。表紙はかわらばんそのものを模した造りで、生成りの紙地に縦組みの筆文字、そこへ大鯰や人魚、空飛ぶ椀のような器、手長足長といった瓦版に頻出した妖しの図像が黒一色の線描で並ぶ。中央には旅装の娘が淡い藍と肌色で控えめに色づけされ、周囲の刷り物的なざらつきと響き合う。読み手の前に一枚の摺物が差し出されるような誌面構成が、物語の入口そのものを担っている。

著久保田香里 tono
装丁アルビレオ
装画tono
くもん出版 / 2019年
絵本・児童書