
国語、数学、理科——学校の科目が並ぶ題に、唐突に「誘拐」がねじ込まれる。日常の延長で起こる事件を、子どもたちの視点から軽やかに描いた連作短編集である。表紙は水彩タッチのイラストレーション。制服姿の少女、白衣の人物、本を抱えた人物が画面のあちこちに配置され、フラスコ、鉛筆、ABCの並ぶ開いた本、ノートの罫線などが放射状に飛び交う。背景は青と黄をブロック状に切り替え、白抜きの太い明朝でタイトルが斜めに走る。学園の小道具が氾濫する画面に物騒な二文字が紛れ込む構図そのものが、日常と非日常が地続きであるこの物語の手触りを伝えている。
著桜庭一樹
装丁関口信介
装画マツオヒロミ
文藝春秋 / 2017年
文学・評論