
1992年に貨物船から太平洋へ流出した黄色いゴム製のアヒルの行方を追い、海洋プラスチック汚染や海流のメカニズムを描き出すノンフィクション。表紙は古い博物図譜や航海記の口絵を思わせる額装構成で、深緑の地に金縁の枠、シダの葉、錨、剣、赤いリボン、巻きつくタコの脚が紋章のように左右対称に配される。中央の丸窓には水を湛えたガラスのなかで一羽のアヒルが浮かび、上部のリボンには小さく同じ姿があしらわれている。古典的な装飾図像のただなかに玩具を据えることで、漂流物が辿った航海譚としての本書の射程が静かに告げられている。
著奥田英朗
装丁鈴木久美
装画川上和生
光文社 / 2016年
文学・評論