
平均年令60歳の沢村さん一家の、特別ではない日々をすくい上げたエッセイコミック。家族写真のように三人が並ぶ構図には、長く重ねてきた時間がさりげなく滲む。白を大きく取った余白の上に、手描きの線とくすんだイエローやテラコッタの淡彩が置かれ、輪郭はやわらかく、塗りはあえてはみ出すように軽い。タイトルと著者名は筆書きに近い手の文字で縦に組まれ、絵と地続きに馴染む。装画と書体がひとつの呼吸でつながり、肩の力の抜けた家族の気配を表紙のまま差し出している。
著角幡唯介
装丁岩渕恵子
文藝春秋 / 2019年
ノンフィクション