
父娘の関係を見つめる長編小説。思春期の少女が父に向ける視線、その距離や葛藤を、家族という最も近くて遠い関係のなかで描き出す。深い赤を背景に、おかっぱ髪に制服姿の少女が横顔を見せて佇み、まわりには小さな梅の花が散り敷くように咲く。墨の濃淡で描かれた繊細な人物画と、白抜きの太い和文タイトルが、余白を持って一枚絵のように構成される。鮮烈な朱色は娘の内に灯る感情の温度であり、うつむきがちな横顔は父へ届かない言葉の重さを静かに示している。

著恩田陸
装丁祖父江慎+藤井瑶
朝日新聞出版 / 2019年
文学・評論