
監視と個人情報の提供を引き換えに快適さが保証された街〈アガスティアリゾート〉を舞台に、住人それぞれの視点から描かれる連作短編。匿名化された未来社会の手触りを、静かな筆致で照らし出すデビュー作だ。カバーには俯瞰視点の3DCGによる都市模型が広がる。碁盤目状の通路、ガラスの高層ビル、ドーム型の建造物、紫と緑のパステル調の植栽。整然と並ぶ箱庭のなかを、顔の見えない人影が点々と歩く。完璧に設計された風景の冷たさが、物語のユートピアの輪郭をそのまま手渡してくる。
著乙一
装丁有馬トモユキ
装画loundraw
集英社 / 2021年
文学・評論