
互いの秘密を握りあうことで成立する均衡——核戦略の概念を人間関係に転写したタイトルが、関係の危うさと駆け引きの緊張を示唆する。表紙はモノクロームの線描で描かれた、肩越しに視線を落とす女性像。赤く塗られた爪と唇、そしてタイトル文字だけが朱で差し色となり、白地の余白に鋭く浮かび上がる。筆致は淡く、肌や髪は灰の濃淡で繊細に陰影づけされ、抑制された画面のなかで赤だけが意志のように残る。冷たい均衡の下に潜む熱を、色数を絞った装画が静かに告げている。
著桜庭一樹
装丁関口信介
装画マツオヒロミ
文藝春秋 / 2017年
文学・評論