
鮮やかな黄色を背に、帽子をかぶった老紳士、ベンチに腰かける女性、白い猫、料理を載せた皿、塀の上の人物などが、ゆるやかな線とほのかな彩色で散らされている。視線はあちこちへ流れ、ひとつの物語へ収束する手前で立ち止まる。タイトルは黒の手描き文字でのびやかに置かれ、英字と著者名が静かに添えられる。下方の白い帯では太いゴシックが「夫婦あわせてもうすぐ180歳。三人の息子は、全員独身。」と告げ、画面のとぼけた空気と呼応する。家族の小さな景色を、散歩のような歩幅で見渡す一冊。

著住野よる
装丁bookwall
装画房野聖
双葉社 / 2022年
文学・評論