
英国怪奇文学の祖と称されるアーサー・マッケンの短篇を、平井呈一の名訳で読み継ぐ傑作選。太古の神々や恐怖の法悦をめぐる物語が、文庫の判型に凝縮されている。表紙は鈍い黄土を地に、墨で彫り込まれたような黒の図像が画面いっぱいに広がる。中央には十字と渦巻く眼、周囲には絡みつく草木と獣めいた影、手書き文字の余白が古い木版や石版の質感を呼び起こす。下半分を覆う鮮烈な紫の帯に白抜きで「魔界 幻妖 エクスタシー」と縦に切り込まれ、土俗的な図像と相まって、文字通り神秘と恐怖が同居する一冊であることを告げている。
著折口真喜子
装丁鈴木久美
装画卯月みゆき
東京創元社 / 2015年
文学・評論