
ひと夏の出会いと別れを描く青春小説。タイトルが示唆する九月、すなわち夏の終わりに向かう時間の手触りを、表紙のイラストが静かに引き受けている。窓越しに広がる夕焼けは淡いオレンジから紫へとにじみ、教室らしき机に頬杖をついて振り向く少女と、その傍らで頭を抱えるように俯く少年。二人の制服や肌は水彩のような透明感でやわらかく溶け、白い余白を多く残した構図がそのまま喪失の予感を抱かせる。縦組みのタイトルと著者名はごく細い明朝で控えめに配され、画面の物語を邪魔せず寄り添う。光と影のあわいに置かれた一瞬を、装丁全体が惜しむように包んでいる。

著谷村志穂
装丁鈴木成一デザイン室
装画金子幸代
KADOKAWA / 2021年
文学・評論