
過去から忽然と現れた女をめぐる、赤川次郎のミステリ。柔らかなサーモンピンクを地に敷き、長い白髪を風になびかせ、スーツ姿で大きな旅行鞄を提げて歩く女性のイラストが配される。線は最小限に省かれ、淡いベージュの衣服と小ぶりなショルダーの黒が静かなアクセントになる。タイトルはクリーム色の明朝で縦に大きく置かれ、人物の余白に滑り込むように組まれている。穏やかな色面に「過去」が歩いてくる気配だけが残り、物語の不穏を上品に予告している。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論