
喪失や別れ、残された者の時間を描いた韓国短篇集。家族や恋人を失った人々の、夏のあとに続く静けさを掬い上げる。カバーは強くピントを外した夏の水辺の写真。淡い水色の水面と、奥にぼやける緑の木立、白い光の帯がにじむように溶け合い、輪郭を持たない景色が広がる。白い明朝のタイトルは縦に大きく置かれ、その下に英題が控えめに添えられる。視界の像を結ばないこの一枚が、悲しみを通り過ぎてもなお続いてしまう季節の眩しさを、そのまま装丁に置き換えている。

著チェ・ウニョン
装丁坂川栄治+鳴田小夜子
装画山本由実
亜紀書房 / 2020年
文学・評論