
脚本の技術を教える本でありながら、最初に問うてくるのは「何を書くべきか」よりも「なぜそれを自分が書くのか」という熱源のほうや。ハリウッド式の三幕構成やログラインの整理を押さえつつ、怒りや悲しみのような個人的な感情を起点に物語へ変えていく流れが、実践書としても創作論としても強い。淡い水色の余白と大きく据えた黒い書名、そのあいだを宙へ放り出されたようにも飛び込むようにも見える小さな人物が、理論だけでは閉じない自由さと切実さをきれいに受け止めている。

著川代紗生
装画げみ
ダイヤモンド社 / 2022年
文学・評論