
絵本作家として知られる著者が、日々の暮らしや創作の周辺で書き留めてきた断章を束ねた散文集。森のしずけさに耳を澄ますような筆致で、子ども・動物・記憶のかけらが綴られていく。表紙には、三つ編みの少女がぬいぐるみを抱きしめる油彩画が中央に小さく置かれ、余白の多い白地と対比をなす。背後の黒い擦過と滲みが画面に静かな翳りを落とし、タイトルは細い明朝にわずかな崩しを加えた書き文字風の組みで、絵の余韻にそっと寄り添う。絵と言葉のあいだに流れる、薄明のような時間が立ち上がる一冊。
著柴崎友香
装画長谷川潾二郎「紙袋」
筑摩書房 / 2020年
文学・評論