
明治から現代までの長い時間を、鉄道の沿線とそこに生きた人々の視点から綴る長編小説。表紙には富士山を遠景に、川沿いに広がる町々と路線、地名を記した札が俯瞰で描き込まれた、大正期の鳥瞰図を思わせる絵が一面に据えられている。空の青、山の緑、河原の黄土が鮮やかに刷り分けられ、四隅を細い罫線と小さな円飾りで囲うことで、絵そのものが一枚の地図帖のように仕立てられている。中央の白い短冊にだけ題と著者名を黒で静かに置き、絵と文字を地と図の関係に整理した構成が、土地と時間を辿る本書の歩みと響き合う。

著青柳碧人
装丁織田弥生
装画げみ
集英社 / 2019年
文学・評論