
翻訳という営みを巡る思索を、断章として綴った一冊。言葉が別の言葉に置き換わるとき、何が運ばれ、何が失われるのか——著者は静かに問いを重ねていく。生成色の地に、山高帽をかぶった人物の横顔が版画調で刷られ、胴体にあたる黒いシルエットには走り書きの筆記体が滲む。「TRADITORE(裏切り者)」の文字が斜めに刻まれ、四隅にはタイトルの漢字がマゼンタで配される。翻訳者という匿名の影と、こぼれ落ちる言葉の手触りが、一枚の画面に同居している。
著森乃おと
装丁三崎了
雷鳥社 / 2018年
科学・テクノロジー