
大正期を思わせる路面電車を背に、外套姿の紳士と学生服の少年、足元には白い猫がたたずむ。内田百閒その人を思わせる「先生」の周りで起こる怪異と謎を、文豪と古典への深い眼差しでつづる連作。くすんだオリーブの地に、電車の濃緑と人物の渋い茶を重ね、足元から立ちのぼる白い渦が雲とも霊気ともつかぬ気配を漂わせる。タイトルは明朝の縦組みで右肩に配し、黒帯のコピーが昭和の事件帖の風情を引き締める。怪異と日常が地続きで揺れる、装画の余白そのままの読み心地。

著尾八原ジュージ
装丁坂詰佳苗
装画Hana Chatani
KADOKAWA / 2023年
文学・評論