
文明開化の気配がまだ濃い明治期の横浜を舞台に、「奇談」を商う新聞屋たちが街の事件と怪異に挑む連作。実在の地名や風俗を背景に、市井のざわめきと幻想がほどよい温度で交差する一冊。表紙は袴姿の青年と洋装の青年を中央に据え、その背後に新聞の見出しらしい縦組み文字や赤い庇の店並みを配し、下半部には鬼や蛇、人魚めいた異形が墨線で渦巻くように敷き詰められる。タイトル帯は朱地に白抜きの縦書きで、新聞紙面の題字を思わせる罫を伴い、上質紙の白い余白とともに紙メディアの記憶を呼び込む。明治の街路と異界が一枚の紙面で組み合わさり、本書の語り口そのものを表装に翻訳している。
著ドリアン助川
装丁岡本歌織
装画まめふく
ポプラ社 / 2021年
文学・評論