文学・評論
兄と弟、あるいは書物と燃える石
長野まゆみ
兄と弟をめぐる出来事を、書物と時間のモチーフに重ねて綴る連作。カバーには、迷路のように折り重なる本棚と階段、宙を舞う鳩、横たわる時計、そして本棚の上にぽつんと立つ少年が、淡い水彩で描かれている。赤い表紙の本が点々と差し色のように散り、白を基調とした空間に揺らぎを与えている。タイトル文字は端正な明朝で縦に組まれ、帯の「目に見えるものは、いつもほかのなにかを隠している」という一文と響き合う。覗き込むほど奥行きが現れる装画と、静かな物語の呼吸がよく似合う一冊。