
タイトルが告げるのは、自分による自分のための物語という閉じた円環。SNS時代の自意識と承認の在処を、花にたとえながら静かに揺らがせる連作短篇集。装丁は画面全体をスマートフォンに見立て、上部のステータスバーや下部のナビゲーションバーまで描き込まれている。赤いカーテンと花柄のワンピース、ストライプのタイツに銀色のパンプス、足元の黒猫といった色数を絞った構図のなかで、横顔の少女が一輪の花を顔の前にかざす。被写体としての自分と、それを眺める自分とが同じ画面の中で重なる一冊。

著宝島社
装丁菊池祐
装画田中寛崇
宝島社 / 2016年
文学・評論