
華やかな世界に身を置きながら、その光の裏で揺らぐひとりの女性の姿を描いた長篇。表紙には、青・赤・黄・紫の絵具が激しく交錯する画面のなかから、見開かれた両眼と紫に染まる唇だけが鮮明に浮かび上がる女性の顔が大きく置かれる。筆触はあらわで、絵具の垂れが涙のように頬を伝う。タイトルは黒の明朝で縦に組まれ、文字の脇に小さな星印が添えられて、毒気のある色彩を辛うじて受け止めている。剥がれ落ちる仮面の下にある素顔を、絵具の混濁そのもので示した一冊。

著綾辻行人
装丁鈴木久美
装画遠田志帆
KADOKAWA / 2014年
文学・評論