
迷子になった龍と、夜明けを待つ人々。神話的なモチーフを通して、喪失や祈り、再生の予感を静かに紡ぐ物語。表紙には、緑がかった光に満ちた室内で本を読む少女と、その傍らに立つ少年が描かれる。背後の窓辺には植物が茂り、そこから龍の長い体がゆるやかに姿を現す。木の床に落ちる柔らかな影、淡い色彩、繊細な線描が、現実と幻想の境を曖昧にしている。タイトル文字は白い縦帯に黒々と組まれ、絵の静けさを引き締めながら、夜明け前の祈りにも似た気配を画面全体に行き渡らせている。

著藤石波矢
装丁川谷康久
装画けーしん
新潮社 / 2020年
文学・評論