
瀬戸内の島にあるホスピスで、人生の最期に食べたい「おやつ」を一品ずつ取り戻していく女性の物語。穏やかな海と濃い緑の森が画面を上下に分け、その境界を一艘の小舟が静かに横切る。水面に伸びる光の道、深い緑に散る小さな黄の点、淡くにじむ空──手描きの絵筆で重ねられた風景には、澄んだ明るさが漂う。タイトルは丸みを帯びた肉太の手書き文字で軽やかに置かれ、絵のやわらかさと自然に呼応する。生と死のあわいを、こんなにも穏やかな景色として差し出してくる一冊。
著増山実
装丁岡本歌織
装画中村一般
ポプラ社 / 2021年
文学・評論