
地方の小さな書店を舞台に、毎週金曜だけ開かれる特別な企画を巡って人々が交差する連作短編。本を介して交わされる静かな対話が、登場人物それぞれの来し方をゆるやかに照らしていく。表紙は紺青を基調に、開かれた巨大な書物を背景として配し、その手前に読書する人、本を抱える人、珈琲を手にする給仕、寝そべって頁をめくる客を多視点で描き出す。タイトルは朱赤の手描き文字で大きく組まれ、藍と黄緑の差し色が夜の書店の灯りのように画面を引き締める。本と人が等しい比重で並ぶ構図そのものが、一冊が誰かの一日を変える小説の主題を静かに体現している。

著谷津矢車
装丁五十嵐徹
装画山本祥子
中央公論新社 / 2022年
文学・評論