
極北の地でうしを狩る——その旅と食をめぐる記憶を、絵本のかたちでひらいた一冊。表紙いっぱいに描かれるのは、こちらをじっと見据える獣の顔。重厚な黒い毛並みと、額から角へと流れ落ちる白いかたまりが、油彩の筆致でゆっくり立ち上がる。背景は雪原を思わせる淡い灰青、タイトルと著者名は右端に縦組みで控えめに置かれ、画面の主役を獣に譲っている。狩る者と狩られる者のあいだに横たわる沈黙が、一枚の肖像として静かに差し出されている。
著土井善晴
装丁漆原悠一
装画鈴木康広
ミシマ社 / 2023年
暮らし・健康・子育て