
日々の暮らしのなかで通り過ぎてしまいそうな出来事を、丁寧にすくい上げて綴ったエッセイ集。タイトルの不思議な響きが、市井の風景に潜むささやかな違和や可笑しみを予感させる。カバーには、淡い水彩で描かれた石壁の路地と、手前に大きく張り出した観葉植物の鋭い葉、青空の覗く一角が広がる。路地のなかほどに小さく座り込む人物の姿が、画面のスケール感を一気に親密なものへと変える。タイトル文字は白抜きで縦に控えめに配され、絵の余白と呼応するように静かに置かれている。見過ごされがちな景色をそっと差し出すような、装画と言葉の距離感が印象に残る一冊。
著大桃洋祐
装丁漆原悠一
玄光社 / 2023年
アート・建築・デザイン