
江戸を舞台にした時代小説で、「裏草紙」の副題からは表通りには出てこない物語の気配が漂う。漆黒の背景のなかに、青藍の着物をまとった女性が三味線を抱え、目を伏せて静かに座る姿が浮かびあがる。日本画的な筆致でていねいに描かれた人物の周囲を、淡い紫の花びらがゆるやかに舞い、闇に沈む空間で人物にだけ光が落ちる構図。題字は白の明朝で縦に大きく置かれ、副題は小さな枠囲みで控えめに添えられ、静かな緊張感を保っている。闇夜の江戸の気配を、伏し目と散る桔梗の一枚に凝縮した装いとなっている。
装丁アルビレオ
装画伊藤彰剛
albireo / 2015年
文学・評論