
和菓子屋を舞台に、訪れる者の悩みや因縁を菓子と怪異で解きほぐしていく連作の第三巻。獣耳と長い白髪をもつ着物姿の人物が桜の小枝を手にし、奥には眼鏡の青年と硝子棚に並ぶ上生菓子、紅白の提灯がほの暗く灯る。淡い桜色と藤色を背景に、墨色の着物と店の木組みがやわらかく沈み、表題の「怪奇帳」だけがやや鋭い筆致で抜かれている。甘やかな店先と、その奥にひそむ気配。装丁はその二層の温度差を、桜の余白に閉じ込めている。
著甲田学人
装丁百足屋ユウコ+豊田知嘉
装画花邑まい
KADOKAWA / 2020年
文学・評論