
江戸の市井を舞台に、小さな居酒屋「ぜんや」を切り盛りする女性と、店に集う人々の機微を季節の料理とともに描く時代小説シリーズの一篇。表紙は木枠の屋台を見立てた額縁構図で、店内に立つ女将、棚に並ぶ徳利や器、青魚や大根といった食材を柔らかな線と渋い和色で描き、手前には筍と蓮根の煮物、青菜、土鍋、炊きたての炊き込みご飯、奴豆腐などが俯瞰で並ぶ。題字は太筆の手描き風で湯気のような温度を帯び、紺地の題簽が一枚、画面を引き締める。眺めるだけで膳の支度が始まるような、絵と料理と物語が地続きの一冊。

著ほしおさなえ
装丁五十嵐徹
装画丹地陽子
角川春樹事務所 / 2019年
文学・評論