
南アルプスを舞台にした山岳ミステリの一冊。深い森の奥、人が踏み入らぬ「聖域」で起きる事件と、そこへ分け入る者たちの軌跡を追う長篇である。カバーは苔むした巨木と澄んだ流れを捉えた緑一色の写真の上に、明朝体のタイトルを縦組みで大きく配し、文字の黒と植生の濃淡とが拮抗する。著者名は白抜きで添え、欧文タイトルは控えめな線で森の奥行きに溶け込ませた。閉ざされた森の重みと、その懐に踏み込もうとする緊張が、画と文字の対比のうちに静かに立ち上がる。
著桂望実
装丁高柳雅人
装画Jiwoon Pak
光文社 / 2022年
文学・評論