
勤め人を辞めて月十万円で暮らす女性の日々を描く「れんげ荘物語」シリーズの一冊。古いアパートの庭先に通ってくる猫との時間を軸に、ささやかな営みの手触りが綴られる。表紙は深い青を地に、洗濯物のシャツとズボン、洗濯かごと洗濯ばさみ、草花のあいだに佇む白い猫を版画調のタッチで配する。タイトル文字は白でやわらかく置かれ、赤い小鳥と黄色い蝶が物語に呼吸を通す。生活道具と生きものが同じ画面で並ぶ構図そのものが、暮らしの速度を取り戻す物語の温度を伝えている。

著樋口明雄
装丁高柳雅人
装画高田裕子
角川春樹事務所 / 2021年
文学・評論