
井上荒野の小説。「そこにはいない男たち」というタイトルが指すのは、傍にあるはずの誰かを欠いたまま続く女たちの時間——ワインを傾け、食卓を囲み、それでも不在を抱える視線である。表紙はオフホワイトの紙面に角丸の図像を据え、鮮やかなマゼンタと深い緑が上下で反転する。上には目を閉じてグラスを掲げる女性、下には箸でもてなされる女性。二人が鏡像のように向き合い、その間に語られない男たちが横たわる。平らな線描と色面の構成が、声高ではない感情の揺らぎを静かに引き寄せる。

著角田光代
装丁池田進吾
装画鬼頭祈
角川春樹事務所 / 2020年
文学・評論