
江戸・神田を舞台に、人と妖し(もののけ)が交差する人情の機微を綴った連作。市井の暮らしに寄り添いながら、ふと現れる怪異がもたらすほろりとした余韻を、軽やかな筆致で掬い取る。鮮やかな朱地に亀甲文様を敷き、白い枠のなかへ墨書のタイトルを大きく配する。周囲には着物姿の娘、笠をかぶった旅人、白猫、宝珠、菓子、面、長い黒髪の女など、物語に登場する人物や妖しが切り絵風に散らされ、和の意匠と現代的なレイアウトが軽快に響き合う。賑やかな図像と整った枠組みの拮抗が、笑いと哀しみが同居する一冊の佇まいを的確に伝えている。

著木内昇
装丁櫻井久
装画松本竣介
KADOKAWA / 2016年
文学・評論