
人新世という時代の輪郭を、犬という最も近しい他者を介して描き出す短編集。市井の手触りと不穏な余白を行き来する語り口で、人と動物の境界が静かに揺らぐ。表紙は様々な犬種の顔写真をコラージュ風に大胆に切り貼りし、画面いっぱいに舌や鼻先を迫り出させて視線を撹乱する。右下に配された白いスピッツ風の手描きイラストだけが波線の背景に囲まれ、写真群とまったく異なる時間を流す。題字は左肩に縦組みの細い明朝で慎ましく置かれ、過剰な情報量に一本の芯を通す。賑やかな表層と、その隙に潜む違和。装丁そのものがアントロポセンの肖像になっている。
著波木銅
装丁森敬太
装画高木真希人
太田出版 / 2024年
文学・評論