
小説すばる新人賞を受けた、雪の夜にすべてを失った青年がそれでも人生を諦めないさまを描く長編。タイトルが示すのは「正しさ」の裏側、地図に描かれなかった場所からの視線である。表紙は白地の上に青と濃紺の絵具を厚く重ね、波とも雪解けともつかぬ流動を刻み、その上に明朝の縦組みでタイトルと著者名が静かに置かれる。下端を紺の帯で締め、白い大きな手書き文字が一行、読者に呼びかける。荒れる景色のただなかで誰かに出会い直す物語の温度を、絵具の筆触がそのまま体温として伝えてくる。

著壁井ユカコ
装丁アルビレオ
装画スカイエマ
集英社 / 2024年
文学・評論