
二十世紀初頭のパリで観客を震え上がらせたグラン・ギニョル座の旗手による、戦慄と残酷の短編集。狂気、殺意、死の予感が舞台上で淡々と演じられる、フランス恐怖演劇の精髄が翻訳で読める一冊。装画は劇場のボックス席を切り取った構図で、深紅の緞帳が左右に引かれ、奥には緑がかった闇と、緞帳から雫のように滴り落ちる血の文字でタイトルが据えられる。手前には頭部が紫のマスクで覆われた長衣の人物、向こうから差し出される刃を握る手。バルコニーの天使彫刻まで細密に描かれた銅版画調のイラストが、劇場という装置そのものが恐怖の上演機械であることを静かに告げている。
著高山羽根子
装丁新潮社装幀室
装画M!DOR!
新潮社 / 2020年
文学・評論