
イラクに派遣された武装警備員の視点から、戦地と日常の境界が溶け合う感覚を描いた中編。芥川賞候補作となった、著者の初期作品である。カバーは厚い雲海を俯瞰した灰青のモノクロ写真で、雲の切れ間にひとすじ光が落ち、地上のような暗がりが覗く構図。題字は明朝で縦に大きく組まれ、視線を空の只中へと引き込む。蛍光イエローの帯が下半分を断ち切るように差し込まれ、静謐な空気を一気に現実の温度へ引き戻す対比が、戦場と日常を往還する物語の重心と響き合う。
装丁関口聖司
カバー写真松尾哲
文藝春秋 / 2014年
文学・評論