
長大な現代ファンタジー「キングキラー・クロニクル」第2部、その5冊目にあたる文庫分冊。一人の若者が自らの半生を回想として語り続ける物語は、中盤を越えてさらに深部へと分け入っていく。深い紫の夜と緑のシダに包まれた森のなか、赤い髪の青年が物思いに沈み、青い蝶と幻のような少女の影が周囲を漂う。タイトルは細い白の明朝で静かに置かれ、英題と著者名はスクリプト体で下部にひそやかに添えられる。幻想と憂愁が同居する場面が、長い物語の只中に流れる時間を映している。

著鷹見一幸
装丁早川書房デザイン室
装画NAJI柳田
早川書房 / 2018年
文学・評論