
路地のアパートの外階段に立つ少女、足元に置かれた自転車や三輪車、洗濯物の影──ある日常の風景を切り取ったような一冊。タイトルが示すのは、確かに「いた」はずの誰かをめぐる記憶の揺らぎだろうか。表紙は蛍光ピンクとシアン、二色のみで構成された線画で、影や植物の塗りがビビッドに浮き上がる。白い余白を多くとった構図は紙の質感をそのまま見せ、少女の存在をどこか半透明に感じさせる。色の鮮烈さと、そこに立つ人物の希薄さ。その対比が、タイトルの問いをそっと裏打ちしている。
著根本宗子
装丁名久井直子
装画愛☆まどんな
小学館 / 2022年
文学・評論