
名探偵たちの「恋」を主題に据えた、五人の作家によるミステリ・アンソロジー。推理という理知的な営みに、人の心の揺らぎがどう交差するのかを五つの視点から描き出す一冊。表紙は淡い藤色から青みがかった紫へと滲む光のなかに、椅子に腰掛けた少年と、その目元へ細い手が眼鏡をかけようとする瞬間を捉えたイラストで構成される。散らばるトランプ、緩んだネクタイ、伏し目がちな視線が、推理の冷たさと触れ合いの温度を同居させる。タイトルは赤い円形の中に手描き文字で置かれ、紫の画面に小さく心拍のような熱を灯している。

著佐織えり
装丁成見紀子
装画はてなときのこ
KADOKAWA / 2018年
文学・評論