
人をめぐる業や愚かしさを、独特の話法と諧謔で描き出す町田康の短編集。日常の裂け目から滲み出る不穏や哀しみが、軽妙な語り口の奥に潜んでいる。表紙には、細く頼りない棒の先にうずくまる一匹の猿が据えられている。古びた絹のような淡い土色の地に、毛並みの濃淡と赤らんだ顔がぽつりと浮かび、余白の大半を占める静けさが孤独の気配を強める。題字と著者名は墨色の細い明朝で控えめに置かれ、画と競わない。高みに留まることの不安定さと、その姿のどこか可笑しさが、人間という生きものの寄る辺なさへと静かに重なっていく。

著瀬川コウ
装丁名和田耕平デザイン事務所
装画wataboku
講談社 / 2018年
文学・評論