
50年前のガイドブックを片手に銀座や浅草、東京タワーやスカイツリーをめぐる紀行エッセイ。半世紀の時間差を観光という軽やかな所作で結び直し、町と食の記憶をたどっていく一冊である。表紙は生成りの紙と未晒しのクラフト紙を上下に分け、その境目にスカイツリーと旧来の建物、観光客を描いた朱色の円形スタンプを配置。「2012」と「1960」の年号が円周に並び、版画めいた線描とインクのかすれが、古いガイドを押印したような手触りを生んでいる。紙色の段差と一個の朱色が、時代の隔たりとそれを越える歩みを静かに示している。
著荒俣宏
装丁北谷彩夏
装画鈴木順幸
講談社 / 2011年