
アメリカを捨て日本に移り住んだ作家が、母の死を抱えてチベット高原の最果てへと向かう越境文学。一千年の祈りの地を辿る、死と再生の旅路が描かれる。表紙では、横倒しに据えられた山岳と祈りの旗の写真が画面左半を占め、抜けるような青空が右へと続く。その上に置かれた「天路」の二文字は紙面の端から大きくはみ出すように配され、明朝の細い縦画が空へ伸びる稜線と呼応している。視線を九十度傾けることで初めて立ち上がる風景が、言葉と国の〈間〉を歩く旅の臨界を静かに告げる。

著畠中恵
装丁大久保伸子
装画丹地陽子
講談社 / 2016年
文学・評論