
コロナ禍に見舞われた2020年1月から2021年1月までの東京の日々を、作家が仔細に書き留めた日記文学。緊急事態宣言、休業要請、Zoom飲み会といった出来事と、その渦中で揺れる暮らしの感触が綴られる。表紙は白地に水彩のタッチで描かれた一人の人物像。マスクをつけ、キャップを被り、黄色いトレンチコートに鞄と花束を提げ、緑の傘を差して立つ姿が、淡い線と滲みで素描される。タイトルは右側に縦組みで簡素に置かれ、クラフト紙の質感を帯びた帯が穏やかに画面を引き締める。匿名化された一人の輪郭が、変わりゆく町を歩き続けた一年の重さを静かに支えている。

著千早茜
装丁大久保伸子
装画入江明日香
河出書房新社 / 2024年
文学・評論