
ある日、出版社に14枚の絵と短い言葉だけを残して消えた男、ハリス・バーディック。残された絵に物語を寄せた14篇の短編集である。表紙は黒い余白を額縁のように深く取り、中央にモノクロームの一葉を据える。線路の上を帆をかけた手押し車で進む子どもたち、水平線の彼方にかすむ街影。鉛筆で刻まれた緻密な階調と、銀板写真のような静けさが画面を支配し、白いタイトル文字だけがそっと闇に浮かぶ。何が起きるのか、起きたのか――答えを欠いた一枚絵を、装丁そのものが「未完の物語の余白」として差し出している。

著チェ・ウニョン
装丁坂川栄治+鳴田小夜子
装画山本由実
亜紀書房 / 2020年
文学・評論