
エレベーターのドアが開き、茶と紺のスーツに身を包んだ二人が立っている――けれど、その顔はどちらもコアラ。手前にも背を向けたコアラたちがいて、視線の先を共有させられる構図だ。緻密なペン線に淡い水彩を重ね、ガラスの映り込みやタイルの光まで丁寧に拾った一枚絵に、白い筆文字のタイトルが縦に大きく落ちる。日常の風景にひとつ異物を差し込むだけで、ここはどこかと問いたくなる。とぼけた違和を、装画と余白が静かに引き受けている。
著大原大次郎
装丁大原大次郎+宮添浩司
グラフィック社 / 2023年
アート・建築・デザイン