
戦後翻訳文学とバーの世界を行き来した著者による、ミステリ短篇の傑作選。都市の片隅に潜む不可解な事件や、ふと姿を消す女たちの輪郭を、乾いた語り口で掬い上げる。表紙は横たわる女性の顔を、水仙・チューリップ・パンジー・スミレの花束がそっと覆い隠す構図。背景にはモザイク状のベージュとグレーの正方形が散り、画面の端を欠落させていく。「幻」の一字だけが大胆に崩されたタイトル組とともに、像を結びそうで結ばない女の気配を静かに立ち上げている。

著斎藤宣彦
装丁川名潤
装画西村ツチカ
筑摩書房 / 2016年
社会・政治