
東京の坂道をめぐる随想集。亡くなった父の足跡をたどり、坂のある風景に父や母、そして自らの人生模様を重ねていく。幽霊坂、胸突坂、別所坂、王子稲荷の坂、桜坂、蛇坂など、起伏のある街の記憶が一篇ごとに描かれる。表紙には夕暮れに染まる空の下、坂の上から見下ろす街並みのイラストが広がり、手前には黄色い家、坂を下る小さな人影が配される。タイトルは大ぶりの明朝体で縦に組まれ、絵の中の坂の傾きと呼応するように画面を横切る。穏やかな配色と静かな視線が、過ぎ去った時間を歩き直すような佇まいをかたちづくっている。

著乾石智子
装丁アルビレオ
装画またよし
筑摩書房 / 2019年
文学・評論